怨念
「ようは、俺が『刻印』を行使出来ればOKなんだろう?」
食い下がるように昇はいまだに立ち続けている。
「保証がない、と私は言ったんです。私は、何も人殺しになりたい訳ではありません。出来る限りの事はしておこうとは思いますが……覚悟はしておいて下さい、という意味です」
淡々と述べる瑞樹に、渋々ながらも昇は腰を下ろす。
「攻撃用、回復用等の呪符は明日の朝にでもまとめて三塚に届けさせます。私が作ったものなので、綾名さんの呪符ほど出来はよくないでしょうけど、それは我慢してください」
自身の力のみで、昇は放出系の魔術を行使出来ない。
考え抜いた末に昇が取った方法は、他者の魔力を何かしらの媒体に宿し、自身の詠唱によって意思力を高め、魔術方程式を行使するという方法だった。
だがやはり他者の魔力を用いているせいか、威力は格段に落ちる。並みの魔術師クラスの力さえも扱えない、というのが実情。だからこそ昇は自身の『内側に向ける魔術』の研鑚に勤しんだのだが。
「近隣への引越しも大体終わりましたし……数日中には光洋高校に転入出来るはずです。それまで無茶はしないで下さいよ」
ああ、と昇は答えたものの、瑞樹としてはやはり不安だ。義兄は昔から『メンドい、メンドい』と言いつつ、こういう件では必ずと言って良い程周りを遠ざける。周りに被害を与えないためなのだろうが、そのせいで彼は中学時代に一人で『怨念』を除去しようとして、逆に手痛い目にあった事がある。簡単に信用は出来ない。