三日月の絆その4

銀の刃

銀の刃

状況の把握に努めろ。どうすれば自分に有利な戦局を生み出せるか思考するんだ。

相手を……玲於奈を撃退するには、どうすれば良いかを。

 昇は自身を叱咤するものの、その体は鉛のように重く感じられる。

(……本当に……クソッタレだぜ!)

 握った拳で通路の壁を思い切り叩き付ける。ズシン、と拳に響いた痛みは、それでも心の痛みとは比べものにならない。

 司影の時も、衝撃は大きかった。ただ、彼女の場合は『死影』の存在を抹消するという他の目的が即座に出現したために、その動揺は消せたのだ。

『死影』を消せば、『友人』はすぐに戻ってくる、と。

自分に言い聞かせる事で冷静さを保てた。

だが今回は……『友人』は戻ってこない。

 勝っても。

負けても。

生き延びても。

死んでも。

彼女は。

戻ってこない。

彼女は。

自分を。

……殺そうとしているのだから。

「『あの人』だったら……どうすんだろうな、こんな時」

 通路の壁に寄り掛かり、救いを求めるように茫洋と呟く。

(……貴方を、殺しに来たわ。端山昇)

 赤い光を灯す左手で、どうしようもない現実から眼を逸らすかのように、昇は自身の顔をわしづかみにする。

脳裏に蘇るのは。

真冬を思わせる、凍て付いた声。

死神を具現した、銀の刃。