銀の刃
状況の把握に努めろ。どうすれば自分に有利な戦局を生み出せるか思考するんだ。
相手を……玲於奈を撃退するには、どうすれば良いかを。
昇は自身を叱咤するものの、その体は鉛のように重く感じられる。
(……本当に……クソッタレだぜ!)
握った拳で通路の壁を思い切り叩き付ける。ズシン、と拳に響いた痛みは、それでも心の痛みとは比べものにならない。
司影の時も、衝撃は大きかった。ただ、彼女の場合は『死影』の存在を抹消するという他の目的が即座に出現したために、その動揺は消せたのだ。
『死影』を消せば、『友人』はすぐに戻ってくる、と。
自分に言い聞かせる事で冷静さを保てた。
だが今回は……『友人』は戻ってこない。
勝っても。
負けても。
生き延びても。
死んでも。
彼女は。
戻ってこない。
彼女は。
自分を。
……殺そうとしているのだから。
「『あの人』だったら……どうすんだろうな、こんな時」
通路の壁に寄り掛かり、救いを求めるように茫洋と呟く。
(……貴方を、殺しに来たわ。端山昇)
赤い光を灯す左手で、どうしようもない現実から眼を逸らすかのように、昇は自身の顔をわしづかみにする。
脳裏に蘇るのは。
真冬を思わせる、凍て付いた声。
死神を具現した、銀の刃。