仮面
「……いいわ。私を止めようとしたことを後悔させてあげる!」
くすりと『死影』が嗤うと、仮面のルーン使いは法衣に燐光をまとい、電信柱から暗黒が覆うグラウンドへとその身を落とす。それを見た彼女も、自身の身体能力を魔術で高めつつ屋上から飛び下り、
「怨嗟の雄叫びを伴え、我が魔光。闇の力をもって冥府の主を祝福せよ!」
攻撃を仕掛けた。空に刻まれた黒き方円から、夜よりなお暗い光が目標に照射される。
仮面のルーン使いは青き法衣から取り出した双剣を用いて、『死影』同様、地面に魔術方程式を刻み込んでいく。
「我が描きしは彼の者の罪。我が裁きしは黒の咎人。堕ちた天使に光の断罪を!」
遥か古代に失われた文字が彼の足元に具現されると、場から光が螺旋を描いて『死影』の攻撃を相殺。互いが打ち消しあった魔術の威力によって雷もかくやという大音響が発生した。突風にグラウンドの土が旋風を巻き上げ、地面に落ちた葉を残さず持っていく。
その間隙を縫って仮面に近接していた『死影』は、あらかじめ魔術方程式を打ち込んでおいたナイフで顔面に突きを繰り出す。
反応よく仮面はその攻撃を回避し反撃に出ようとするが、すでに『死影』は彼の攻撃範囲から逃れている。
『死影』が体勢を整えるのと同時にピシ、とルーン使いの仮面右半分に亀裂が入り、その素顔があらわになる。
それを見た『死影』は、
「……ふん……貴方だったのね」
嫌悪を隠そうともせずに吐き捨てる。
「……結構、気に入っていた仮面なんですがね、これは」
裏側にびっしりと不可解な文字が彫られた仮面を投げ捨て、眼鏡をかけていない高遠字久は鷹のような双眸をもって『死影』と対峙した。