三日月の絆その4

ルーン

ルーン

「ふふふふ。それにしても面白い展開になってきたわ」

闇よりなお濃い漆黒の衣服に身を包む『死影』は屋上のフェンスに腰掛けながら、思わず恍惚とした笑みをこぼしてしまう。

「まさか彼女があれほどの実力者とはね」

 幸い、玲於奈には『ある事情』がある。『対極分割』を封じた術式と極めて似た方程式を施された自分だけがわかる『ある事情』。自分になど構っている余裕は、魔力的にも時間的にもあるまい。

「さて、じゃあ昇君に会いに行きましょうか」

 この肉体にも慣れ、『固有結界』を敷く必要性もなくなった。かつ、玲於奈に気を取られている今ならば不意を突くのは容易。

彼の苦痛に悶え苦しむ姿はどれだけ甘美かと想像し。

 視線を夜空に向け、膝のバネだけで真横に跳ぶ。刹那、宙から飛来したのは一本の剣。フェンスを鉄のネット共々両断し、コンクリートの屋上に突き刺さったそれは微細な振幅を起こしながら揺れている。剣に刻まれているのは禍々しき文字。

「ルーンソード……なるほど。邪魔はさせない、と言う事かしら?」

 片手を突きながら着地する彼女は、刃の様な眼で屋上から離れた電信柱を見た。いや、正確には柱の頂上に佇む人物に叩き付けたのだ。その身にまとった青き法衣を夜風に揺らし、感情を宿さぬ白き仮面で顔を覆ったルーン使いに。