はしる
はしる。はしる。
ぼくは、はしる。
いつものくさっぱらで、『おぼうさん』をまつために。
おぼうさんは、いつもぼくがきたあとにくる。
いままでいっかいも、おぼうさんがさきにきたことはない。
でも、いつもぼくはあそこまではしっていく。
だって、おぼうさんは、ぼくを『けっかんひん』だとおもっていない。
ちょっとこわいけど、いえのひとのようなつめたいめはしない。
なにより、おとうさんみたいだから、あのひとは。
だから、はしる。
すこしでも、ながくおはなしをしたいから。
すこしでも、はやくあいたいから。
さかみちにきて、ぼくはあるきはじめた。
ここまでくれば、あともうすこし。
ぼうぼうとはえたくさが、かぜでゆれている。
うえをみあげると、かけたおつきさまがぼくをてらしていた。
「……きれいだなぁ」
ぼくは、みたままのことをしゃべった。
きょうの、かけたおつきさまは。
どうしてか、とてもきれいに。
とても、かなしそうにみえた。
おつきさまをみあげていると、ざっ、ざっ、て、あしおとがきこえてくる。
「待たせたな、小僧」
おつきさまのひかりをあびているおぼうさんは、ぜんぜん、いつもとかわらない。
でも。やっぱりぼくには、かなしそうにみえたんだ。