選択
(……それが、貴方の最大の欠点でもあるのよ)
……どういう意味なんだ?
彼女の背を見つめながら昇は頭の中で何度も反芻する。
だから、昇はついに気付く事がなかった。
玲於奈が『また明日』とは言わずに。
『さよなら』という言葉を用いた、その意味に。
ネオンが街を灯すビルの屋上で、純白のコートが風になびく。
眼下に広がる光の宴を見る少女の表情はいつになく厳しい。
「……命というものは、まさしく光のようね。光陰、矢の如し、だったかしら」
あまり口を開かない彼女が、いつになく雄弁に語るのは何故か。
細く、白いその手を握り締め、
「……皆の敵を討つためには、奴を探し出す事が最低条件」
憂いに満ちた青い瞳を閉じる。
「そのためなら、どんな犠牲も……厭わない」
震える声は、しかし自らの想いによって何よりも強固なものになっている。
今宵の宴が終わるまでには、彼と決着をつける。しかし彼が宿すあれに、衰えきった自分がどこまで太刀打ち出来るか。
何より。
本当に自分は、彼を殺せるのだろうか。
「……殺せるかどうかじゃない。殺さなければならないのよ」
自らに課した残酷な言葉。
その言葉には、どんな思いが込められているのか。
それを知るのは、彼女のみ。