ファーストフード
右手にはハンバーガー。手袋をした左手にはバニラシェイク。モグモグとハンバーガーを咀嚼し、
「ああ、うめえ」
ゴクン、とベンチに座しつつストローでシェイク共々飲み下す。
青い天井の下で食事を取るのは格別だ。春の風は桜の香りと共に花びらを乗せてくるため、ほど良い眼の保養となる。太陽の輝きは平等に全てを照らし、その暖かさが『生きている』という実感を与えてくれる。
「……これが、巷で有名なファーストフードね」
呟く玲於奈はポリポリとポテトを食べている。
「まさかとは思いますけど……先輩、ファーストフード食べた事、ないんですか?」
外国ならばこういうものはいくらでも食べていると先入観を持っていた昇は、つい軽い疑問に捕らわれる。
「……ええ。私の家族は大概、田舎に住居を構えていたから」
だから、続けて質問をしてしまった。
「そういやぁ、ご家族は外国のどこにいるんですか? それとも日本に?」
「……いないわ」
言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
「母は私が生まれた時からいなかったし、祖母は五年前に、父は三年前、兄も一年前に亡くなっているわ」