約束
「人には、向き、不向きというものがある。小僧、お前の言う『力』を扱えぬ人間は、世界中に星の数程存在する」
?
うそ?
そんなの、きいたことない。
「そうなの?」
ぼくのしつもんに、おぼうさんはうなずく。
「それでも、人は生きている。その知恵と肉体を駆使し、この世界を駆け巡っている。魔術など、些細なものだ。行使出来ぬからと言って不具合が生じる訳ではない」
そう、なの?
……でも……
「それに、小僧。お前は一つの事実を忘れている」
なにを?
「お前の左手は、何者の魔術をも退ける叡智の結晶。模倣とは言え、それはお前の大きな武器となる。何より、素養がなければその刻印を受け入れること事体が不可能」
おぼうさんはぼくをみて、
「自信を持て。お前は、お前を見下す魔術師などよりも格段に優れている」
ごつごつしたおおきてなてを、ぼくのかたにおいた。
「確かに、今は辛かろう。だがこの試練は、魔術師としてよりも、むしろお前の人としての大きさを成長させてくれるはずだ」
それは、かけがえのない『ざいさん』になる、っておぼうさんはいった。
ぼくのかたからてをはなして、おぼうさんはつえをもってたちあがる。
「小僧。明日、お前は何処かへ発つのだな?」
『むかえ』がくる、というのをいいたいのだとぼくはおもい、ちいさくうなずく。
「ならば、今夜、この場所でもう一度落ち合おう。その時に、お前に渡すものがある」
さらさら、とかぜにくさがなびいている。
おぼうさんはいくらかあるくと、いつものようにこちらをむいて、あのことばをいった。
「小僧。約束だ。今日、私と、お前との間に成立した会話は、誰にも喋らぬと」
「うん!」
ぼくは、おおきなこえで、ちからいっぱいそうこたえた。